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Jenre

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文仙(2年生) / 2013.02.09 (Sat)

 一年以上の時間を一緒にすごして、仙蔵が泣いているところを一度たりとて見たことがなかった。彼は他の同級生とは明らかに違う雰囲気を纏っていた。そんな彼が部屋で膝に顔を埋めて蹲っていたものだから、文次郎の鼓動は大きく跳ね上がった。無意識に足音を殺して、彼の目の前にしゃがんだ。顔を覗きこもうとすると、それよりはやく頭が上がった。爛々と光る黒い瞳が、きつく文次郎を射抜く。整った顔立ちが壮絶なほど美しく見えて、文次郎は瞬間息が止まった。
「――泣いているのかと、思った」
「ばかもの、誰が泣いたりするものか」
 部屋に響く声には強い決意が含まれていた。この瞬間から、文次郎は仙蔵という存在から目を逸らすことが出来なくなった。その後五年間、ずっと。


利仙 / 2012.12.31 (Mon)

優秀な忍であればあるほど、自らの、そしての相手の実力というのはよく分かる。だからこそ、仙蔵はこの人に会うのが苦手だった。会う程かなわない実力差を思い知らされているような気分になるのだ。笑われる度、まだまだだと暗に言われている気がして、奥歯を噛みしめ釈然としない気持ちを誤魔化した。


伊仙は『街中で受けが攻めに足の甲へ痛みの伴うキス』をします。 / 2012.03.23 (Fri)

委員会の買い物で町に出た際に艶やかな女性に扮した彼に出会ったのは、本当に偶然だった。恐らく間抜けな顔をしたであろうぼくに、仙蔵は普通の男ならばだれもがくらりときてしまうであろう笑みを向けた。あぁ捕まったな、と本能的に理解した。自分の用はほぼ終わったというのに帰れる気配は当分ない。

化粧道具を売る店で、仙蔵はあれでもないこれでもないと真剣に品定めをしていた。ぼくはすぐに飽きてしまって、ただ仙蔵の姿をぼんやりと目で追うだけである。店の女将と目があって、へらっと笑う。「こんな美人なお連れがいて、さぞ鼻が高いことでしょう」「えっ? いいえそんな、それほどでも」

しくじったな、という事には言った直後に気がついた。女将がまたまたご冗談をと笑うのに合わせて仙蔵も笑ってみせたが、その目は笑ってはいなかった。店を出てすぐに足を踏み抜かれ、ぼくは悲鳴を押し殺すことに精一杯になった。それに満足したのかは不明だが、そのまま仙蔵から口づけを落とされた。


初日の出とプロポーズな現パロ留伊 / 2012.01.01 (Sun)

新年早々いくつかの不運に見舞われて、初日の出を見るのにとっておきの場所に着いたときには太陽はもう半分ほど顔を出していた。ぼくららしいや、って笑いあって東の地平線を眺めた。
「伊作」
「なーに?」
「結婚しようか」
 今日の晩ご飯なににする?くらいの軽さで言われて、ぼくはびっくりするのを忘れて結婚の仕方について考えてしまった。
「そしたら渡米しないと」
「ちがうちがう。いや違わないけど、そうじゃなくて。ただ来年もその次もずっと、おまえと初日の出を見れたらいいなって」
 横を見ると、留三郎の顔は朝日に照らされて赤く染まっていた。きっと朝日のせいだけではないけれど、それは気付かなかったことにする。そうだね、って軽い口調で愛だけをこめて返事をした。


現パロ文仙♀ / 2012.01.01 (Sun)

高校もセーラー服は嫌だと最後までごねていたくせに、仙蔵は結局同じ学校についてきた。誰よりも早く見せてもらった、紺色の衿にえんじのスカーフはよく似合っていた。一体何が気に食わないんだと問えば、拗ねた口調でサイズが上手く合わないんだと答えた。そのときは首を傾げたが、しばらくしてその意味が分かった。なるほど確かに胸囲の布が余っている。